怒りの墓場

超怒ってる

女性アルバイトを寿司屋に紹介した話

寿司が好きだ。 世界で一番好きだ、というほどではないが、まあ人並みに好きだ。

さて、友人に寿司屋の大将がいる。 友人と言っても年は一回り以上も上だ。 たまたま居酒屋で隣に座って会話して以来、とても可愛がってくれる年の離れた友人である。

見た目はイカツイが超のつく良い人だ。

友人の店は、ぼくがよく飲んでいるエリアからそんなに離れてはいないので、たまにお邪魔する。 もちろん回っていない方の寿司屋なので、とんでもなく旨い。 それなのに値段は非常にリーズナブルなので、安月給のぼくでも気軽に立ち寄れる秘密の隠れ家的なお店だ。(有名だけど)


ある日、大将と飲んでいるときにちょっとした相談を受けた。 「だれかバイトしてくれる人いない?」

そんなに広い店ではないので、満席になってもある程度は回転はさせられるのが、注文が重なったりピークタイムの時などはどうしても滞ることもあって、接客が行き届かないこともあるので少し余裕がほしい、という趣旨である。

注文が聞けてドリンクを作れればいい、出来たら女性のほうが華があっていい、とのことだ。

「何人か心辺りがあるので聞いてみます」と返事した。


この話とは別に、ある女性の友人とご飯を食べに行く約束をしていた。 心辺りのうちのひとりだ。

いい機会だと思い、件の寿司屋に行くことにした。 お互いに紹介もできるし手っ取り早い。寿司も食べたいし。

寿司はやっぱり旨かったし、女性にアルバイトの話をしたところ「前向きに考えてみます」とのことだった。 大将も「良さそうな子だね」と言っていた。

好感触というやつだ。

その女性は普段アパレルの仕事をしているので接客もお手の物だし、人当たりもいい。 見た目も悪くないし年齢も30歳を少し過ぎたくらいで客層を考えると受けも良さそうだ。 寿司も好きだって言うし。

これはいい出会いを提供できたな、と少しうれしくなった。


その何日か後、とあるパーティに来ていた。 飲めや騒げやで楽しく満喫していたら、その女性がふらりと現れた。

特に寿司屋の話をするわけでもなかったが、帰り際に「あのお店で働いてみたい。話を進めてほしい。」と告げられた。

あとは、お互いに連絡先を教えるだけだ。 待遇や労働条件は両者で交渉すればいいし、まあ揉めることもないだろう。

ぼくの役目は無事に終わりを迎えた。 めでたしめでたし。


それから2週間ほど経った頃だろうか。

居酒屋で酒を飲んでいると仕事上がりの大将がふらりと現れた。 そしてポツリとこう呟いた。

「あの子、働かないことになったよ。」

えっ、なぜ!? 寝耳に水すぎる。

どうやら家庭の事情で実家に戻っており、しばらくの間は実家から仕事に通うのでアルバイトをする時間を作るのが難しい、とのことだった。

そうだったのか。 相談くらいしてくれても良かったのに、と少し残念な気持ち、には全くならなかった。

だって、さっきInstagramに一人暮らしの家で晩御飯の写真アップロードしてたもんね。 昨日も。一昨日も。

嘘じゃねーかよ、100%。 意味不明だ。


結局、その女性がなぜアルバイトをするのをやめたのかは謎のままだ。 しょうもない言い訳を聞く気はない。

たが、紹介という形をとった以上、やめるにしても嘘は良くないだろう。

別に「やっぱめんどくさくなった」でも良い。 大将に直接言うのが億劫ならそれこそ、相談してくれれば良いのだ。 そんなことでは怒ったりしないし、どうとも思わない。

30歳を過ぎた大人が、すぐバレるような嘘をついてまで知り合いに紹介されて一度は引き受けた仕事を断る、ということのほうがよっぽど怒りポイントが高い。

完全に「紹介しなければ良かった」というやつだ。 うまくはいかないもんである。

紹介料として寿司でも奢ってもらおうと思ってたのに。